大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)4033号 判決

被告人 石井らく江

〔抄 録〕

検事の控訴趣意について。

よつて按ずるに昭和二十六年十月一日横浜市条例第四十八号横浜市風紀取締条例第七条に謂うところの売春をさせる目的で婦女を雇入れた者とは売春をさせる目的で婦女を雇入れている状態にある者を指称するのであつてすなわち継続的雇入れ就労状態を処罰しようとするのであり単に雇入れ契約を締結した者を意味するものではないことは同条例第一条に掲げてある同条例の目的並びに昭和二二年勅令第九号の存するのに拘わらず横浜市において特に同条例を設けた趣旨からも窺われるところである。従つて売春をさせる目的で婦女を雇入れている者は右の雇入れの状態を廃止しない限り同条例第七条違反の状態は継続するものであり、かかる犯罪に対してはその間に確定判決があつてもすくなくとも右確定判決以後の所為は独立の罪を構成し新たな起訴の目的となるものであることはいうまでもないところである。然るに原審は同条例第七条の解釈を誤り雇入れた者とは雇入れ契約を締結した者と解した結果本件起訴にかかる各雇入れの所為とさきに確定した略式命令記載の事実は結局同一事実であるとなし本件の起訴をもつて確定判決を経た事実について更に起訴があつたものとして刑事訴訟法第三百三十七条第一号により被告人に対し免訴の判決を言い渡したことは判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の解釈適用を誤つたものと謂わざるを得ないから本件控訴は理由があり原判決は破棄を免れない。

註 一、その後四・一一第十刑事部において同趣旨判決あり(二七(う)第三、八九五号事件)。

註 二、当審判決は右判旨につづいて破棄自判して前記略式命令確定の日(二七・七・一九)の翌日たる七・二〇より八・五迄の婦女甲及び乙の各雇入れの事実を認定判示し右条例第七条刑法第四五条第四八条を適用している。

尚これに対する原審判決は左の通りである。

本件公訴事実は「被告人はいずれも売春をさせる目的で横浜市中区日の出町二丁目百五十三番地自宅において売春玉代折半の条件で、

第一昭和二十七年七月二十日頃より同年八月五日頃までの間婦女である石巻きく江を、

第二同年七月二十日頃より同年八月五日頃までの間婦女である根本かねを、

各雇入れたものである。

というのであるが被告人の当公廷に於ける供述石巻きく江の検事に対する第一回供述調書根本かね作成に係る事実始末書及び松崎徳治作成に係る被告人に対する略式命令謄本によれば被告人は肩書住居に於いていずれも売春をさせる目的で石巻きく江を昭和二十六年十二月末雇入れ根本かねを昭和二十七年五月半頃雇入れたことを認めることが出来るしかも右略式命令謄本及び被告人の前科調書によれば石巻きく江、根本かねを雇入れた右事実については昭和二十七年七月三日横浜簡易裁判所に於いて、略式命令によつて罰金一万円に処せられ右略式命令は同月十九日確定したことを認めることが出来る。

尤も略式命令記載の各雇入れの日が、前記認定の雇入れの日と異つて居るが、右証拠によれば被告人が右石巻きく江、根本かねを雇入れた日は前記認定の雇入れの日であり、その他に雇入れた行為はないことが認められるので右認定の雇入行為と右略式命令記載の雇入れ行為とは同一であると認める。而して略式命令が確定したときは確定判決と同一の効力があることは刑事訴訟法第四百七十条によつて明白であるので、本件は確定判決を経た事実について更に起訴があつたものと認め刑事訴訟法第三百三十七条第一号を適用して、被告人に対し主文で免訴の言渡をする次第である。

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